史上最大の上場案件となるSpaceXの新規株式公開(IPO)が今週にも価格決定される見通し。アルファベット(GOOGL)株は5月18日の過去最高値から12.67%下落した直後である。
この上場により、推定約10兆ドル規模の過去10年間の投資が、日々変動する新たな時価評価になる。この透明性がウォール街の強気な目標を後押しする一方、初日の売却を見込む投資家も存在する。
SpaceXは木曜日の夜に公募価格を決定し、金曜日にナスダック市場で「SPCX」として取引開始予定。1株135ドルの固定価格で750億ドルの調達を目指し、上場時の評価額は約1兆7500億ドルに達する見込み。
これが実現すれば過去最大の新規株式公開(IPO)となる。投資家の注文(オーダーブック)締切前には需要が1500億ドルに迫ったと報じられている。
一方で、SpaceXは今回の公募の5%を直接販売枠として用意し、経営陣が選んだ購入者に株式を割り当てている。これらの購入者には通常のIPO後のロックアップ(売却制限)が適用されず、即時売却が可能。
対照的に、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は自身の約40%の持分を366日間のロックアップ対象とした。
初期出資者にも売却機運が流れる。ベンチャーキャピタルのスペースキャピタル創業者でSpaceXの初期投資家であるチャド・アンダーソン氏はFortuneの取材に対し、
最大の「静かな勝者」はアルファベット自身である。
グーグルは2015年にSpaceX株を約9億ドルで取得した。2026年末時点での
アルファベットのSpaceX持分は6.11%と、「ブルームバーグ」がアラスカ州の提出書類をもとに4月に報じた。SpaceXが2月にマスク氏のAI企業xAIと合併したことで新株が発行され、現在の持分は約5%に低下した可能性が高い。上場価格ベースでこの持分の価値は870億ドルから1000億ドルの範囲となり、約100倍の含み益を持つ。
SpaceX株への投資エクスポージャーを得たい投資家は長らくアルファベット株に着目してきたが、今後は直接SPCXにシフト可能となる。
さらにグーグルは先週、SpaceXにAI計算能力の利用料として2029年6月まで毎月9億2000万ドルを支払う契約で合意。その総額は約300億ドルにのぼり、Anthropicの月間12億5000万ドル契約と並ぶ規模。
こうしてアルファベットの資金はいずれのケースでもSpaceXの収益につながっている。
今回の上場によってアルファベットは含み益を現金化する道筋を得た。
アルファベットは2026年の設備投資(データセンターやハードウェア関連)が最大1900億ドルに上ると見込む。本業による営業キャッシュフローは3月までに1740億ドルで、想定支出を下回る状況。
6月の資本調達パッケージには、180億ドル分の株式売却と167億5000万ドル分の転換優先株が含まれる。優先株は後に普通株式へ転換される。また、上場市場で新株を「随時」売却できる400億ドル規模のプログラムも追加した。
要するにアルファベットは、今年の支出が本業キャッシュフローを超過するため、その差額を株式発行で賄う計画。SpaceX株による収入があれば新たな株式発行を抑制できる。
株式発行済数は流通する全株数を示す。この発行済株式数は、今四半期に121億2000万株と、2025年末の120億9000万株から増加。少なくとも2018年以降で初めての増加となり、売却期間中は自社株買いが一時停止する可能性があると開示されている。
SpaceX株の売却があれば、新株発行なしで資金調達の穴埋めが可能。しかしスケジュールが鍵となる。SpaceXの上場は6月12日で、初の決算報告は6月30日四半期分を対象とする。
この決算発表は通常、7月下旬から8月にかけて公表される見通し。通常のスケジュールに基づけば、決算発表後2営業日に保有分のうち20%が売却解禁になる。
このタイミングで約180億ドルから210億ドルの現金化が見込まれる。既存株主の中で、初日に売却可能なのは5%の直接販売プログラムの購入者に限られる。
残りは180日後にロック解除される予定、最速で12月となる。調査会社モーニングスターの評価はスペースXを約7800億ドルと見積もる。これは上場時評価額のおよそ半分である。
200億ドル規模の売りが、既に割高とされる株価に圧力をかければSPCXは下落する可能性が高い。SPCXが下がればアルファベットの持ち株価値も減少する。
アルファベット株は4週間連続で下落し、安値から高値までで12.67%下げた。ただし、2026年は依然として15%以上の上昇基調を維持している。
ボリュームベースの機関投資家売買圧力指標であるChaikin Money Flow(CMF)は6月初旬にマイナスへ転じた。指標は-0.10前後で下げ止まり、-0.03まで回復した。
これは5月中旬に0.40前後だった値と対照的で、当時は大規模な機関投資家の買いが示唆されていた。ゼロ近くまでの回復は、売り圧力が和らぎつつある兆候といえる。
日々の出来高も下落局面で減少が続き、売り手の勢いが弱まっていることがうかがえる。現実的な換金計画が示されれば、資金フローが再び上向く理由となる可能性がある。
オプション市場は、この下落局面でトレーダーがどのようなポジションを取ったかを示している。
プット・コールレシオは下落で利益を狙うプットと、強気なコールの取引枚数を比較する。1を下回ればコール優位。GOOGLの出来高ベースの比率は6月9日に0.49を記録。5月18日の高値以降、概ね0.36〜0.83の範囲で推移している。
建玉比率(オープンインタレスト)は0.78。これは5月下旬の0.85付近から低下しており、一部の投資家が下落ヘッジを解消している。
2桁の下落幅を伴うコール優位は、SPCX上場後にアルファベットの再評価を見込む投資家心理を表す。「サム・オブ・ザ・パーツ」と呼ばれる考え方で、企業を個別の事業価値に分けて評価する。
アナリスト目標値と株価チャートがポジションを実際の数値に落とし込む。
TDカウエンは今月、アルファベットの目標株価を450ドルから475ドルへ上げた。Googleのデータセンターの電力容量が2031年までに10倍へ拡大すると予想する。
スペースXの上場も重要な要素となる。SPCXの実勢価格は持分価値を日々再評価する。アルファベット株1株当たり7ドルから9ドル分。下限は希薄化を反映した持分5%分の875億ドル。上限は6.11%の1069億ドル。総発行株数は121億2000万株で、単価換算すると7ドル20セントから8ドル80セントとなる。
他の目標値もやや低いが依然強気。HSBCは今月唯一の目標値引き下げで420ドル(前は435ドル)、格付けは買い継続。バークレイズは405ドル、UBSは410ドル(ホールド)、バンク・オブ・アメリカは430ドル、ニーダムは450ドルとする。
アルファベット株はスペースX上場を控え、今年に入って15%超の上昇を維持。機関投資家資金の流入も復調傾向で、オプション市場でもコール買いが優勢。1000億ドル規模の利益がすぐ目の前にある。
5月18日の過去最高値408ドル99セントは前日終値比で12%上。この最低ラインのアナリスト目標405ドル・410ドルとほぼ一致する。
従って、高値を超えてくれば株価は405ドルから475ドルのレンジ内に入る。SPCXの好スタートと、アルファベットによる持分売却の示唆が相乗効果をもたらす。
リスクも明確。初日に売却される5%分には規制がない。現時点では360ドルが下値の分岐点で、475ドル台への道と、弱気派の支配になる下落局面を分けるラインとなる。