「もし彼らが合意に違反すれば、われわれは徹底的に空爆する」。トランプ米大統領は、米国とイランの和平合意を発表した同じ記者会見でこう発言した。停戦の恩恵を受けた市場には、明確な脅しが織り込まれた形となった。
今回の和平合意により、ブレント原油価格は大幅に下落し、金やS&P500は過去最高値を記録、ビットコインもホルムズ海峡の再開によって上昇した。今年はじめに原油価格が1バレル100ドルを超えた供給ショックが解消した。しかし、トランプ米大統領はこれらの動静すべてに条件を付けた。
似た状況は過去にもあった。4月、トランプ米大統領が停戦を発表し、市場は好感したが、その後合意は崩壊した。戦闘が再開すると、ブレント原油は1バレル126ドルまで上昇し、戦時の最高値となった。株価は売られ、金は4800ドル付近まで上昇した。リスク選好が崩れ、ビットコインも下落した。4月の停戦は、和平実現前の織り込みは危険という教訓を市場に与えた。
ブレント原油は、紛争の最中に126ドルを記録した。本日6月18日時点では75ドル近辺にある。この差分は市場が現在抱える和平プレミアムに相当する。もしトランプ米大統領が脅しを実行すれば、このプレミアムが急速に剥落し、原油価格は戦時水準まで上昇する可能性が高い。
金は和平発表で上昇したが、戦闘激化時には4800ドル付近でピークを付けた。戦闘再開となれば、再び高値水準が意識される。
ビットコインも同様の状況を経験した。合意で3%値上がりしたが、今年はじめにトランプ米大統領が対立を激化させるたび下落した。現在は約6万4000ドルで、落ち着いたマクロ環境を織り込んでいるが、その前提も他市場同様にもろいまま。
合意が維持されれば、IEAは2027年には世界の原油供給量が1日あたり1億240万バレルから1億1030万バレルまで回復し、数十年ぶりの供給ショックがむしろ供給過剰に転じる可能性を指摘する。その実現には、トランプ米大統領が条件を課したまさにその合意が維持されることが前提となる。
市場は自らの役割を果たし、和平を織り込んだ。今後すべてを決めるのはテヘラン、そしてトランプ米大統領が合意維持を選択するかどうかにかかっている。